研究指導について

内容

  1. 学類・大学院での研究について
  2. 活動
  3. 最近の関心

 

1. 学類・大学院での研究について

基本的に:

  1. エージェントシミュレーション
  2. 被験者行動実験

のどれか(or いくつか or 全部)に興味がある人が僕の研究室の対象になると思います。

シミュレーションの場合、現時点で、計算機やプログラミングに熟達している必要はありませんが、計算機の画面を見ると気分がブルーになるような人はあまり向いていないと思います。(ライフゲームの画面などを見ると血湧き肉躍るという人は比較的向いているかもしれません。)

 

 テーマについて

上記 a, b の範囲で自分な好きなテーマを研究してもらって結構です。(現在の、研究室のテーマについてはここを参考にしてください。)

好きなテーマの探し方ですが、自分の興味を言ってくれれば、僕が分かる範囲でアドバイスします。

また、例えば、下記の文献を読んで「面白い」と思うものを探してみるといいと思います。(貴重な時間を費やすことになるのですから、面白い、と思えることをやった方が良いです。)

a. シミュレーション関係

学類の「進化ゲーム論」の講義で言うと、最後の2回(11/10, 17)の講義で出てきた内容が主なテーマになります。

b. 被験者行動実験関係

日本語で読めるものとしては、以下の研究が参考になります。

一般向け

 学類卒研 募集人数及び選考方法

戻る

 

2. 活動

セミナー

だいたい、週一回くらいのペースでセミナーをやっています。研究室のメンバーには交替で

  1. 自分の研究について
  2. 関連研究の文献紹介

などの発表を行ってもらいます。

セミナーは、(1)研究の方針について僕や他の学生と議論する場であり、また (2)学生の間で知識・情報を共有・交換 する場でもあります。なので、可能な限り全員が出席できる日時に行います。

輪読会・英語の学習

ゲーム理論入門、行動経済学など、テーマを決めて輪読を行います。

また、論文作成、口頭発表・議論のために必要な英語力を身につけてもらうため、基本的構文作成能力の構築を行います。

いずれも、週一回程度です。

それ以外の指導

必要に応じて、個人的に会ってインフォーマルにダベります。(僕のオフィスに来てもらったりとか、一緒に昼飯に行ったりとか。)研究の進行状況・方向について議論します。

就職希望の人への注意:

就職活動期間中はセミナーに出ることはできないと思いますが、あまり就職活動が長引くと議論について行けなくなって 、大学四年生の一年間が、精神的に厳しいものになると思います。就職活動の見込みがかなり厳しい人は、少し覚悟が必要だと思います。

戻る

 

3. 最近の関心

 「将棋」というゲームには均衡解が存在します(どちらかに必勝戦略があるか、引き分け)。

 解を求めるために、伝統的ゲーム理論のプレーヤーは、まず、遠い未来にわたる膨大な可能性をすべて検討し ます。しかし、実際に、「可能性を検討する」とはいっても、将棋における場合の数は桁違いなので、現存の最高性能のコンピュータでも我々が生きている間に計算は終わりません。均衡解を知るためには、現実離れした計算力を持つ理想的プレーヤーを仮定する必要があります。(ただ、将棋のようなゲームにおいて均衡解の存在を証明できるということ自体は 重要です。 )

 一方、僕自身の興味は、理想的なプレーヤーによる世界よりも、むしろ有限の能力を持つプレーヤーが「実際どう振る舞うのか」にあります。現実のプレーヤーは、しばしば将棋より複雑な構造を持つ問題に直面しなければなりませんし、時には、「何が問題か」自体を完全に把握できないこともあります。

 そのような状況で適切な行動を選択するのはかなり困難なのですが、我々の脳の情報処理機構や生物進化の機構は、ある程度適切な解を有限時間で見つけるのに成功してきています。ここで鍵になるのは適応(学習・進化)によるプレーヤーの内的構造の進化です。 僕の研究では、主に計算機シミュレーションを用いて、適応エージェントの集団現象を分析します。 また、プレーヤーのモデルの再検討という意味で、院生を中心に人間を使った被験者行動実験、脳科学実験を行っています。僕の興味の例としては以下のものがあります。

  1. 社会的協力ルールの形成・発展メカニズムの分析: 「自らの利益を犠牲にするような協力行動」が何故進化してきたのかという問題は、社会科学、社会心理学、哲学、倫理学、生物学など、幅広い分野で興味を集めてきました。(自分の適応度を低くする行動が生き残るというパラドックスはダーウィンを最も悩ませた問題の一つでもあります。)Ostrom等の実証研究では、世界各地の共同体で、時間的・空間的分業に基づく協力ルールを人々が形成・発展していく様子が記述・分析されています。人々の行動様式の進化は、社会的ルールの形成・発展と同時進行で、長い年月の試行錯誤の相互作用・経験・学習により形成され、発展・崩壊を繰り返しながら永続的に変化していきます。このような現象のメカニズムを分析します。
  2. プレーヤーの認識能力 vs. 社会的効率: アリが沢山集まると驚くような仕事をしますが、人間が沢山集まっても必ずしも効率的にならないような気がします(ある種の会議など)。行動のコーディネーションに関するゲームを計算機シミュレーションにより分析すると、社会的効率は、構成員の記憶能力がある閾値を超えたところから急激に悪くなることが分かっています。(社会の効率が、プレーヤーの能力に対してきれいな相転移を起こします。)このような「プレーヤーの認識能力と社会的効率の関係」を分析します。
  3. その他の興味として、ゲーム構造・ネットワーク構造の影響、多体学習の動学、少数派・多数派ゲーム、間接的互恵性の進化、文化の形成・伝播、複雑性・多様性の起源などがあります。

戻る

 

秋山 英三( eizo@sk.tsukuba.ac.jp