筑波大学システム情報工学研究科
平成16年度 ファカルティー・セミナー
(Faculty Seminar)
日 時 : 2004年9月30日(木) 14:00−15:00
場 所 : 第三学群C棟 3C 201
講演者 : 加藤 尊秋 [ 東京工業大学 社会理工学研究科 助手 ]
司会者 : 焼田 党
演 題 : 仮想市場法と回答者のインセンティブ:
なぜ、人々は調査に答えるのか
< abstract >
アンケートや面接形式の社会調査によって公共事業や自然環境の経済価値を算出する手法に、表明選好法がある。特に、仮想市場法(Contingent Valuation Method、仮想評価法とも訳される)には、膨大な研究蓄積があり、回答結果によって評価対象の財の供給が左右される場合について、回答者の戦略的な行動を封じ、真の評価値を聞き出すための方法が開発されている。
しかし、既存のほとんどの実証研究では、回答結果と財の供給の関係は、明確ではない。また、回答には時間を要し、認知的な負荷がかかる点で費用をともなうが、この点も考慮されていない。本報告では、このような現実的な前提の下で、回答者の行動を調査参加による便益と費用の観点から分析し、妥当かつ信頼できる回答を得るための条件を考察する。また、東京都で実施した地球温暖化対策の価値に関する調査のデータをもとに、調査参加による便益と調査参加に関する意志決定の関係、さらに、回答の信頼性との関係について、興味深い事実を提示する。
(なお、本報告の一部には、東京工業大学社会理工学研究科、肥田野登教授との共同研究の成果を利用している)