筑波大学システム情報工学研究科                            

 

         平成16年度  ファカルティー・セミナー

                       (Faculty Seminar)

 

 

日 時 : 200478()  13001400

場 所 : 第三学群B棟 3B 413

講演者 : 神事 直人  [ 一橋大学大学院経済学研究科 専任講師 ]

司会者 : 焼田 

演 題    Strategic Environmental and Trade Policies in an Environmental

                Mixed Duopoly

 

 

 

                           abstract

本論文では,環境問題に対する企業の自主的取り組みが持つ効果について,戦略的環境・貿易政策の枠組みの中で分析を行った.第三国市場モデルにおいて自国と外国にそれぞれ1社ずつ企業が存在し,第三国の市場に輸出を行っている.各企業は生産段階で汚染物質を排出している.自国企業は,自社が排出する外部性を部分的に(または完全に)内部化している「環境配慮型企業」であり,外国企業は通常の「利潤追求型企業」であると仮定する.その結果,本論文で「環境型混合複占」と呼ぶ市場構造になっている.各国政府は輸出補助金と排出税を選択可能である.輸出補助金はマイナスになる(すなわち輸出課税を課す)ことが許容されるが,排出税がマイナスになる(すなわち排出補助金を支給する)ことは仮定により排除される.
 本論文の主な結果としては,まず汚染が国内にとどまるタイプであるか,または自国企業の環境配慮の度合いがあまり強くなければ,自国企業が環境配慮型であってもそうでなくても,社会的厚生にも汚染量にも全く変化がないことを示すことができる.また,汚染が(少なくとも部分的に)越境型であり,かつ自国企業の環境配慮の度合いが十分に強い場合は,自国企業が利潤追求型である場合と比べて,自国企業が環境に配慮することによって,自国の社会的厚生が低下することが示される.これは,自国政府の立場から見た場合に,自国企業が外部性を過剰に内部化しており,しかもそれを政策によって完全に是正することが困難であるからである.さらに,自国と外国が同時に輸出補助金を削減する形で貿易自由化を行うと自国の社会的厚生が低下する可能性があり,その結果,自国が輸出補助金の削減に応じない可能性があることを示すことができる.